ナッジに気をつけよう。補助金と罰金だけではない。
ハヤカワ文庫の『行動経済学』(ミシェエル・バデリー著、土方奈美訳)がなかなかおもしろい。「朝三暮四」という表現は出てこないが、そんなような例がたくさん出てくる。「何とかバイアス」というのがいくつも出てくる。
実験の例もいろいろと出ていて、「人びとが純粋な利他心からではなく、他の人びとに自分が善良で気前よい人間だとシグナリングするために利他的行為を行うことが示されている」というような説明があり、それはそうかもしれないが、そういうことに着目して募金活動などが行われるのだろうかと思うと複雑な気持ちになる。アービング・ゴフマンの「インプレッション・マネージメント」と共通するとらえ方なのかもしれないが。
要するに、人間の行動は合理的とは言えず、損をしてでも無理に自分をよく見せようとしたり、現実を正確に把握することができず簡単なトリックに引っかかって操作されてしまうという発想のようだ。
マイナンバーカードの導入のために、取得すれば5000円分のポイントを付与するとか、健康保険証としての利用申し込みで7500円分のポイントを付与するとかいうやり方を政府が採用した。政府は、そのために予算を組み税金をたくさん使った。マイナンバーカードを取得させるためのインセンティブになるようにしたわけだが、これは、行動科学の「知見」を適用したものなのだろうか。導入のためにはそうするしかないと考えたのだろうか。
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