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June 30, 2023

マニュアルのような本は捨てることができる。

本棚に隙間を確保するために、いらなくなった本を捨てる。マニュアルのような本は捨てることができる。捨てる前に写真を撮っておこう。ずいぶん昔の本だ。

奥村晴彦さんの『LaTeX美文書作成入門』のように最新の版を持っているものもあるが、もう全く意味のないものもある。例えば、CompuServeの本など。

Wikiの本も、もう使わないだろう。他人とウェブ上で協働することは考えられない。書きたいことを1人で書くのは@niftyのココログでよい——これは、20年近く前の2003年12月7日から使っている。

資料の整理などは、しばらく前からEvernoteを使っている。ファイルの中に他のファイルへのリンクを置くこともできるし、検索機能もあるので、関係資料にたどり着くことができる。

Tempimagenkgh7b Tempimagesdfsax

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June 29, 2023

Rehearsal for hybrid procedures in the Chamber of the House of Commons

Hybrid Commons Chamber Rehearsal (B)

上記画像の出所

下の写真を見ていて、たまたま上の写真に出会った。コロナ禍のなかで真剣に議論をする場としては、上のような形の方がいいだろう。しかし、詳しい議事録をあとで公表する意味がないような会議であれば、会議場の形だけ整えても意味がないであろうし、ホテルの広間でやらなくても「書面議決」で十分である。少なくとも、書面議決の場合には、賛成、反対等の投票の結果が残る。

個別の町内会・自治会の上に、校区自治連合会があり、そのさらに上に市の自治会総連合会はあり、開催場所、役員以外の出席者、議題などにその組織の性格がよく現れている。「活性化の取り組み」は、まず、北九州市自治会総連合会内部から始めるべきではないだろうか。

Screenshot-20230629-at-85219
北九州市自治会総連合会、役員会
(平成29年7月21日、ホテルニュータガワ新館2階「華栄」)

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Screenshot-20230629-at-131816

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北九州市自治会総連合会規約

北九州市自治会総連合会規約には、「末端行政の充実」とか「美しい風習」とか奇妙な表現が目につく。

「末端」が重要だという考えであれば、「末端行政」という言葉を使わないのではないか。また、「希求する」という言葉は、「市の末端行政の充実」というような表現とともに用いられるものだろうか。

「自主的に組織活動を助長する」という表現も、どこかおかしい。「美しい風習」とは「醇風美俗」のことだろうか。「善処協力する」という表現も意味が通りにくく、また、「組織の統一化」とは何のことなのか。

どんな時代に誰によって作られた規約なのだろうかと思う。

北九州市自治会総連合会の「正副会長会」で「市関係部局からの説明事項」の説明や、事務局(市職員が委嘱されている)からの報告等があり「意見交換」が行われる。「役員会」では、基本的に、事業計画や予算が、事務局作成の原案通り決定される——詳しい議事録は意味がないので公表されない

その決定結果は各区の自治総連合会に、上意下達の決定事項として通知される。同様にして、各区の自治総連合会から校区自治連合会へ決定事項が通知され、「末端」まで——「市民センター」や町内会・自治会にまで——影響力が及ぶ、というスタイルになっているのではないか。

(目的)
第3条 自治総連は、各区総連合会相互の連携を図り、住み良い地域づくりのため自主的に組織活動を助長し、また市の末端行政の充実を希求し、組織の統一化善処協力することを目的とする。
(事業)
第4条 前項の目的を達成するため次の事業を行う。
(1) 区間の情誼を温め情報の交換又は研究
(2) 市当局の諮問等による調査研究
(3) 美しい風習を育て、より豊かな生活を築きあげるための協議と献策
(4) 地域住民の福祉に関する事項
(5) その他必要と認めた事項
(事務局)
第14条 会長は、市長の了承を得て事務の一部または全部を市職員に委嘱することができる
2 事務局員等の構成については、別に会長が定める。
(会計)
第15条 自治総連に必要な経費は、各区自治総連合会及びその他の収入をもってあてる。
2 会計年度は毎年4月1日から翌年3月31日までとする。

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June 26, 2023

世論調査における政党支持と回答者の世帯年収との関係

Screenshot-20230626-at-100438

読売新聞社の世論調査について検討した。所得階層の関連で捉えれば、立憲民主党と維新のプロファイルは、かけ離れており、両党の支持者が政治に期待する内容にずれがあるはずである。したがって、たとえ有権者への呼びかけが選挙協力についてなされても、両党の支持者の投票行動に大きく影響を及ぼすことがあるとは想定しにくい。(公明と自民の場合には、明らかに、別の要因があって協力がなされているのであろう。)

 

以下が、上記note記事のもとになったRmdファイル

---
title: "世帯年収と支持率"
author: "Yutaka Moteki"
date: "2023-05-06"
output:
html_document:
df_print: paged
toc: yes
toc_float: false
toc_depth: '2'
---

# 政党支持と回答者の世帯年収との関係

## 数値(パーセント)の入力

```{r}
a <- c(17,31,19,12,8,8) # 世帯年収
b <- c(34,10,6,4,2,1,1,1,0,0,39,1) # 政党支持
c <- c(12,12,18,19,17,23) # 年代
d <- 2184 # 有効回答総数
```

## 数値の変換(実際の人数にする)

```{r}
(世帯年収 <- round(a/100*d,digits = 0)) # 世帯年収別回答者数
(政党支持 <- round(b/100*d,digits = 0)) # 政党支持回答数
(年齢  <- round(c/100*d,digits = 0)) # 年齢別回答者数
```

## 第5層と第6層の維新と立民(回答者数)

```{r}
世帯年収[5]*.12
世帯年収[5]*.04
世帯年収[6]*.15
世帯年収[6]*.04

```

## 表よりの入力(維新世帯年収、パーセント)

```{r}
e <- c(11,10,10,8,12,15) # 維新世帯年収(パーセント)を表より
f <- e/100 # パーセントを比率に直す
維新世帯年収 <- round(世帯年収*t(f),digits=0) # 人数にする
維新世帯年収

```

```{r}

# バーチャートを描画する
par(family= "HiraKakuProN-W3")
barplot(e, main = "世帯年収別にみた「維新」支持率", xlab = "世帯年収", ylab = "支持率(パーセント)",names= c("第1層","第2層","第3層","第4層","第5層","第6層"))

```

```{r}
維新世帯年収
others <- 世帯年収 - 維新世帯年収
others
```

## data

## 維新とそれ以外

```{r}
data <- matrix(c(維新世帯年収, others), nrow=6)
data
mosaicplot(data,shade = TRUE)
```

## data_

## 世帯年収の3分類化

```{r}
(世帯年収_l <- data[1,] + data[2,])
(世帯年収_m <- data[3,]+ data[4,])
(世帯年収_h <- data[5,]+ data[6,])

 

data_ <- matrix(c(世帯年収_l,世帯年収_m,世帯年収_h),nrow=3,byrow = TRUE)
data_
```

```{r}
mosaicplot(data_,shade = TRUE)
mosaicplot(data_,shade = FALSE)
```

```{r,fig.asp=0.9,out.width="80%"}
par(family= "HiraKakuProN-W3", cex=0.86)
mosaicplot(data_,shade=TRUE, main = "",dir=c("v","h"))

```

## data01

## 「維新・立民・その他」、世帯収入6分類

```{r}
g <- c(8,8,5,6,4,4) # 立憲民主党、世帯収入別、パーセント
(h <- round(世帯年収*t(g/100),digits=0))
(h <- round(世帯年収*(g/100),digits=0))
data
others01 <- data[,2]- h
data01 <- matrix(c(data[,1],h,others01),nrow = 6)
data01
row.names(data01) <- c("第1層","第2層","第3層","第4層","第5層","第6層")
colnames(data01) <- c("維新","立民","その他")
data01
```

```{r}
prop.table(data01,1)
```

```{r,fig.asp=0.9,out.width="90%"}
par(family= "HiraKakuProN-W3", cex=0.86)
mosaicplot(data01,shade = TRUE, main = "「維新・立民・その他」、世帯年収6分類")
```

## data01

## 「維新・自民・その他」、世帯年収3分類

```{r}
i <- round(c(109*34/10,63*35/9,47*38/13),digits = 0)
i # 自民党支持者
```

```{r}
others02 <- data_[,2] - i
others02
```

```{r}
data_1 <- matrix(c(data_[,1],i,others02),nrow = 3)
# data_1の作成
row.names(data_1) <- c("世帯年収_低","世帯年収_中","世帯年収_高")

colnames(data_1) <- c("維新","自民","その他")
data_1
```

```{r}
round(100*prop.table(data_1,1),digits = 1)
```

```{r,fig.asp=0.9,out.width="90%"}
par(family= "HiraKakuProN-W3", cex=0.86)
mosaicplot(data_1,shade = TRUE,main = "「維新・自民・その他」、世帯年収3分類")
```

## 対応分析

## data01

```{r,out.width="100%"}
library(ca)
par(family= "HiraKakuProN-W3")
plot(ca(data01))
```

```{r}
summary(ca(data01,cor=T))
```

```{r}
cacoord(ca(data01),type= "symmetric",dim = c(1,2))
```

## data02 無党派、自民をデータに入れる

```{r}
np <- c(35,38,39,42,46,39)
np <- np/100
無党派 <- round(世帯年収 * t(np), digits = 0)
無党派

自民 <- c(33,34,33,37,35,38)
自民 <- 自民 / 100
自民 <- round(世帯年収 * t(自民), digits = 0)
自民

data01
その他 <- data01[,3] - 無党派 - 自民
その他
```

```{r}
data02 <- c(自民, data01[,c(1,2)],その他,無党派)
data02 <- matrix(data02,6)
data02
row.names(data02) <-
c("第1層","第2層","第3層","第4層","第5層","第6層")
colnames(data02) <- c("自民","維新","立民","その他","無党派")
data02
round(100*prop.table(data02,1),digits=0)
```

```{r,out.width= "95%"}
library(ca)
par(family= "HiraKakuProN-W3")
plot(ca(data02), arrows = c(F,T))
plot(ca(data02, supcol=5))
plot(ca(data02, supcol=4))

plot(ca(data02, supcol=c(4,5)))
plot(ca(data02, supcol=c(1,5)))
plot(ca(data02, supcol=c(1)))

```

```{r}
summary(ca(data02))
summary(ca(data02,supcol=4))
```

```{r}
cacoord(ca(data02),type= "symmetric",dim = c(1,2))
cacoord(ca(data02, supcol=4),type= "symmetric",dim = c(1,2))
```

```{r,fig.asp=0.9}
par(family= "HiraKakuProN-W3")
mosaicplot(data02,shade = T, main = "自民・維新・立民・その他・無党派\n 世帯年収別")
```

```{r}
knitr::kable(data02)
knitr::kable(round(100*prop.table(data02,1),digits=0))

```

```{r,fig.asp=0.9}
par(family= "HiraKakuProN-W3")
mosaicplot(t(data02),shade = T, main = "自民・維新・立民・その他・無党派\n 政党別", dir = c("h","v"))
```
```{r}
round(prop.table(data02,1)*100, digits = 1)
```
# 求める格差対策

```{r}
o <- c(36,34,29) # 社会保障の充実
p <- c(30,40,43) # 教育の無償化
```

```{r}
p
p <- p/100
p
```

```{r}
par(family= "HiraKakuProN-W3")
barplot(世帯年収,names= c("第1層","第2層","第3層","第4層","第5層","第6層"))
q01 <- 世帯年収[1] + 世帯年収[2]
q02 <- 世帯年収[3] + 世帯年収[4]
q03 <- 世帯年収[5] + 世帯年収[6]
q <- c(q01,q02,q03)
q

r <- round(p*q,digits = 0)
r

prop.test(c(314,271),c(1048,677))

r_1 <- q[1]-r[1]
r_2 <- q[2]-r[2]
r_3 <- q[3]-r[3]

r_ <- c(r_1,r_2,r_3)
r_

```

```{r}
s <- matrix(c(r,r_),2,byrow = T)
s
mosaicplot(t(s),shade=T)
```

```{r}
par(family= "HiraKakuProN-W3")
barplot(年齢,names= c("18-29","30s","40s","50s","60s","70-"))
```

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June 21, 2023

ピラミッド型組織を連想させる「緊急連絡網」について

緊急連絡網(役員用)

Screenshot-20230610-at-81404ピラミッド型組織を連想させる「緊急連絡網」というもの。矢印が下へ下へと向かっている。下から上への情報の流れは想定されていないのだろうか。上の方に自分の名前があって「リーダー」と書いてあると、自分が偉くなったような気分を味わうことができる。これは私だけのことだろうか。防災「統括者」とかリーダーとか図に書いてあるが、緊急時にどんな権限や義務があるのかは不明だ。図の最上部の自治連合会長以外は、自宅で連絡を待って固定電話の近くで待機していないといけないのだろうか。

町内会に組と班とがある。およそ5世帯が所属する班は、少なくとも私が住む地域では、制度的にも日常生活においても、意味をなしていない。多くの場合、友人関係や相互扶助行為は、「5人組」の物理的範囲を超えているのであって、江戸時代の5人組制度のような発想で住民に指示を出したりするのは現実の住民の地域生活を無視しているものと言わざるを得ない。また、夜間人口と昼間人口の区別も考慮されていないのではないか。実際、「正・班リーダー」とか「副・班リーダー」というものは、避難訓練においてさえも機能するものではなかったようだ。

非常時に、「防災統括者」である自治連合会長の指示で校区全体の町内会加入世帯(約2,000世帯)が一斉に避難活動をすることなどが想定されているのであろう。付け加えていうと、私たちの町内会では非加入世帯(151世帯中13世帯、2021年4月現在)がリストから外れている。

安全な場所に避難している自治連合会長(携帯電話番号が名前とともに表示されているのは自宅にはいないということだろう)から始まるこの町内会役職別分担表(名前と固定電話番号が表示されている)に従って住民が「伝言ゲーム」をやっても、作戦中の軍隊のようにはうまくいかないのではないか——非常時に気をつけなければならないのは、流言蜚語の問題であろう。

深刻な事態であれば、作成が自己目的化していて家のどこかにしまい込まれている緊急連絡網シートに頼るのではなく、危険が迫っている地域において関係当局(自治体、消防、警察など)が、直接に個々の住民に、色々な方法で連絡する方が合理的なのではないだろうか。日本災害情報学会会長の片田敏孝氏のような「防災専門家」の「行政依存をやめなさい」というお説教はこういうことについてではないと信じたいところだ。市民が「行政依存」をやめるべきだという主張は、「小さな政府」のイデオロギーに加担しているのではないか。「市民による防災」が、それとは別の「コミュニティの再生」のための手段として位置づけられているのもおかしい。

流言現象について、内閣府防災情報のページに以下のような内容を含む報告書が掲載されている。

 関東大震災時には横浜などで略奪事件が生じたほか、朝鮮人が武装蜂起し、あるいは放火するといった流言を背景に、住民の自警団や軍隊、警察の一部[太字にしたのは引用者]による殺傷事件が生じた。流言は地震前の新聞報道をはじめとする住民の予備知識や断片的に得られる情報を背景に、流言現象に一般的に見られる「意味づけの暴走」として生じた。3日までは軍隊や警察も流言に巻き込まれ、また増幅した。(災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成20年3月

 

Screenshot-20230614-at-84314
縦のものを横にしたこの図だと、印象が少し違う。作成者のセンスの問題なのだろうか。しかし、操車場の図のように枝分かれする一本線は、途中で断線してしまわないだろうかということに気づく。

 

防災とコミュニティ

「防災によるコミュニティ再生」(片田敏孝氏)という発想は、具体的にどのような意味を持つのだろうか。片田氏が「市民による防災」を「コミュニティ再生」の手段と位置づけているのであれば、再生すべきコミュニティの性格をもっと明確にする必要があるだろう。あるいは、防災に地域社会が取り組むことの副次的な効果として、コミュニティ再生を捉えているのかもしれない。その場合でも、具体的にどのようなコミュニティが再生されるのかについて明確にする必要がある。どちらの場合であっても、理想化されたコミュニティが住民にとっては、監視や拘束と結びついた相互扶助システムのディストピアとなる可能性がある。そのような抑圧的で権威主義的なシステムにならないようにする方法は、どの程度考慮されているのだろうか。避難訓練の成功が動員された人々の数で評価される状況などからも、さまざまな問題点が浮かび上がる。

もともとわが国では、コミュニティは地域にとって防災の要だった。その象徴が「火消し」だ。江戸の町は全ての建物が木造で、ひとたび火災が発生すれば、瞬く間に延焼が起こり、町が焼き尽くされてしまう。当然、現代でいう「行政の指示」を待っている場合ではなく、地域の皆で共有する重要な問題だった。コミュニティの存在は自衛手段として必然だったと言える。ところが、「火消し」が消防行政となったことで、コミュニティを維持する必要性が薄れ、煩わしさの方が大きく認識されることとなった。(行政依存やめ「あなた」が備える それが日本の防災の原点 「想定外」の災害にも“揺るがぬ”国をつくるには---Wedge ONLINE)
近年の自然災害の激甚化により、住民は行政対応の限界を感じ、行政の手が届かない部分は地域コミュニティで対応せざるを得ないことに気付き始めている。この状況を好機と捉え、「地域にとっての共通の壁である自然災害に皆で向き合うことでコミュニティの再生につなげる」と考えるべきだ。(行政依存やめ「あなた」が備える それが日本の防災の原点 「想定外」の災害にも“揺るがぬ”国をつくるには)

どういう状態を「コミュニティ」と片田氏は定義しているのだろうか。「もともとわが国では、コミュニティは地域にとって防災の要だった」という言い方が出てくる。江戸の「火消し」がその象徴であると説明されているが、共同体とか地域共同体とかではなく、コミュニティという片仮名言葉を使う意図をどの程度意識しているだろうか。

特に都市部においては隣人の顔さえも知らない人が少なくない。コミュニティの崩壊により防災ができず、共助の推進が難しいとの声も多く聞かれる。しかし、今こそ発想を転換すべきではないか。(行政依存やめ「あなた」が備える それが日本の防災の原点)

「私助・共助・公助」という分類も曖昧で、公助を行政によるものと捉え、共助を地域共同体内における相互扶助と捉えているようだが、市民が「行政依存」をやめるということは具体的にどういうことなのか。「コミュニティ再生」を万能薬として処方する考え方は、行政の役割をスリム化すべきだという「小さな政府」のイデオロギーと結びついているのではないか。それとも、「行政は万能ではない」という当たり前のことを言っているだけにすぎないのだろうか。

5人組のようなものを復活させることが可能であるとは思われない。自治体関係のウェブサイトに以下のような記述があって参考になる。

「五人組」とは、江戸幕府が強制施行した庶民の隣保組織です。原型は律令制下の五保制度で、直接には豊臣秀吉が治安のために置いた五人組・十人組の流れを汲みます。 村方では総百姓を単位に、原則として5軒1組で組織し、相互監察、相互扶助、貢納確保などのため連帯責任制をとりました。のちには幕府・領主の意思伝達、相互扶助に重点がおかれ[太字は引用者]、明治時代になると「衛生班」、戦時中には「隣組」となりました。( 第70話 五人組制度:猪名川町教育委員会教育振興課 社会教育室)
幕府の庶民統制として知られている制度に「五人組」制度がある。五人組は五戸前後の家を組み合わせて設置されたもので、年貢の納入、キリシタン・浪人の取り締まり、日々の生活にまで立ち入って、彼等に連帯責任、相互監察の役目を負わせ、支配の末端組織[太字は引用者]として重要な役割を荷(にな)わせた。名主は「五人組帳」というものを毎年領主に差し出した。この五人組帳には組員全員が署名捺印している部分と、その前に彼等が守らなければならない法度が数々記された部分とがあり、この法度の部分を「五人組帳前書」といつている。(村の法度 五人組帳:嵐山町web博物誌

「勤労奉仕」や「出不足金」のことなどに関心を持っていた2年前の2021年に購入した本に池田浩士『ボランティアとファシズム:自発性と社会貢献の近現代史』(人文書院、2019年)がある。その中で著者は、「阪神・淡路大震災以降の日本社会の歴史が、ボランティアの活動を抜きにしては社会が動かないという方向に進んできた」(24ページ)という広く共有された認識に注目している。阪神・淡路大震災以降には、もちろん、2011年3月の「東日本大震災」も起こっている。厄介なのは、池田氏も触れている「地震と津波によって壊滅しメルトダウンした原子力発電所の破局的事故」(同ページ)の問題であり、廃炉等の見通しが未だに立っていない状況を忘れるわけにはいかない。こちらの方は、ボランティアの活動に期待する方向を、政府も電力会社も今のところ想定していないようだ。


一部の町内会においてみられる属性としてとらえられるもの

都市社会学者近江哲男が町内会の属性として全部で15項目をあげる中で、「一部の町内会において見られる」ものとした4項目のうちの3項目を以下にあげる。彼は、これらを町内会の本質的な特徴であるとはみなさなかった。「長老的・ボス的な旧中間階級によって支配される世界」であるとか、「威光と権力の場」であるということは、その地域の人びとの考えや行動に左右されるものとして捉えたわけであろう。

別稿の注1で取りあげたように「地域の有力者に根回しをしてから全体の調整に入る手法」が重視されたりすることも、その地域に住む人びとがそのことに疑問を持っていない限りにおいて、きわめて有効な組織運営のスタイルなどであろう。

  • 保守的・伝統的・地元主義的な思考ならびに行動の様式を温存し、長老的・ボス的な旧中間階級によって支配される世界であること。
  • 地域における各種選挙の有力な基盤であり、地域社会の権力母体となっていること。
  • この団体における役職が地域における個人の社会的地位を決定し、この団体自体が一種の威光と権力の場であること。
  •  

    「まちづくり協議会の活動があまり活発ではないため、組織の充実を図る必要がある」(北九州市)という課題

    北九州市 市民文化スポーツ局 地域振興課が令和4年4月に発行したパンフレット『みんなが主役の地域づくり・まちづくりのために』を見ると、まちづくり協議会だけでなく、町内会・自治会の場合にも当てはまる事柄が取りあげられている。

    Screenshot-20230625-at-92808

    「組織の充実」という課題のために、役員の定年制・任期制の導入が推奨されている点が興味深い。

    「みんなが主役の地域づくり」というスローガン(あるいはキャッチフレーズ)がある。これは、「草の根のレベルの民主主義」を唱道するものであろう。 しかし、「活動があまり活発でない」という認識が共有されているようだ。なぜ活動が活発でないのか、また、なぜ活動が活発でないとして問題視されるのか。

    「笛吹けども踊らず」という事態であるならば、笛を吹くグループの権威や正当性の問題——選出のされかたや組織運営の透明性など——であるかもしれない。また、踊りたくない人にとっては、聞こえてくる笛は耳障りのものでしかない。

    「市民による防災」という発想が出てきているが、旧来の拘束的で権威主義的なシステムを復活させるわけにはいかないはずだ。「組織の充実」に「万能薬」はないであろうが、様々な工夫が必要なのであろう。

     


    [補足]

    石巻市の大川小で起こったことは、ある程度知っている。申し訳ないことだが、「釜石の奇跡」というのを知らなかった。津波、洪水、土砂崩れなどの被害は地形的な面から被害の予測が立てやすく、避難すべき場所の指定も可能かもしれない。「奇跡」と言われているようだが、奇跡ではなかったということなのであろう。「想定にとらわれない」に始まる「避難3原則」というのは、子どもたちが「徹底して身につけていた」ということだが、抽象的すぎてその「実用性」がよくわからない。シミュレーションや訓練をしょっちゅうしていたことの成果なのだろうか。

    学校という組織の災害時の対応の仕方と地域住民のそれとは、区別して議論する必要があることは予想される。「コミュニティ再生」というスローガンがしばしば語られるが、地域社会全体を、学校や、会社、軍隊などと同じように組織化することが不可能であることは言うまでもない。

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    June 18, 2023

    バーナード・マラマッドの「レンブラントの帽子」を読んで

    Tempimagefhmjau

    数時間前に本の写真だけを載せて「これから書きます。何かについて反省する記事になりそうな予感がします」と書いておいたが、書き始めてみると書きようがない。ニューヨークの美術学校に勤務するルービンとアーキンの話。感銘を受けなかったのではなく、身につまされる話であったという事情である。夏葉社発行の本の帯には、「マルマッドの最高傑作である/ 表題作ほか/ 引出しの中の人間/ わが子に殺される/ の2篇を収録」と書かれている。「レンブラントの帽子」は、マルマッドの最高傑作と評価されているようだ。2番目の「引出しの中の人間」では抑圧的な体制の下での作家の生き方が米国からの旅行者の目からスリリングに描かれているが、「レンブラントの帽子」の方は、日常的な、美術学校の同僚の間でのやりとりが描かれている。ルービンは、彫刻家であり、アーキンは、「美術史家」である。

    私の周りにもルービンがいるかもしれない。私も、自分の能力や実績に不満を持っているルービンかもしれない。私は、アーキンのように相手のことを理解できるかどうかわからない。他者を理解しようとする余裕が、状況によってはどれだけあるものなのだろうか。だが、レンブラントが偉大な画家であるという発想を排除してしまえば、ルービンもアーキンも仲違いをする必要がなかったのではないか。それは、夜郎自大というもので無理なことなのだろうか。

    作者バーナード・マラマッドが、レンブラントの絵を高く評価していたということは推測できる——レンブラントの絵(帽子を被った自画像)を私も美術館で見てみたい。和田誠氏が装丁を担当した本の表紙だけでなく。ルービンが被っていた帽子を見て、アーキンがその絵に言及したことが仲違いのきっかけという筋になっている。何も起こらない場合には、物語にならないので、小説の中にレンブラントの絵を登場させる必要があったのであろう。

    意味のない感想になってしまった。「文学を考えるうえでマラマッドはたいせつな世界をもっていた」という荒川洋治氏の「巻末エッセイ」での評価に同意する。


    追記:
    ChatGPT君に「レンブラントの帽子」について感想を尋ねてみたら、まったくでたらめであった。そもそも登場人物の名前が違っていた。トレーニング・データが不完全なのだろうか。それとも、そそっかしい性格なのだろうか。

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    June 16, 2023

    村上春樹『職業としての小説家』(新潮文庫)あるいは「民主主義の学校」について

    2日前に本屋で、雑誌の棚で面陳列されている『世界』7月号の表紙の「狂騒のChatGPT」という特集に目が行った。雑誌を手にし、清算前の本を入れるプラスティック製の緑色の小さな籠にそれを入れ、籠を持って店内を移動した。雑誌のコーナーには、月刊Hanadaと月刊WiLLが平積みで2山ずつ、うずたかく並べられていて、それらの表紙に縦に並んでいる大きな文字のメッセージにいつも違和感を感じながら通り過ぎる。文庫の棚で、背差しになっている『職業としての小説家』も籠に入れた。本屋は、自宅から自転車で15分程度のところにある小規模の複業商業施設の2階にある。最初から目的地と買う物を決めて出かけたわけではない。雨の日は除いて、毎日自転車に40分程度乗ること自体が目的であるので買い物をするときもあるし、しないときもある。

    私は、村上春樹の熱心な読者ではない。彼の小説はたぶん1編しか読んだことがないと思う。その小説の名前を思い出すこともできない。しかし、今回、平成28年10月1日発行と奥付に書いてあるものを読み始めた。そのきっかけは、村上春樹・柴田元幸『本当の翻訳の話をしよう・増補版』(新潮文庫)を11日前に同じ本屋で買って読んでいて、海外の小説や翻訳のことが取りあげられていて面白かったので、そこに紹介されている小説を自分も読んでみようかと思っていたことである。しかし、本屋の文庫の棚には、読んでみようと思ったものがなかったので、しかたなく、村上春樹氏の『職業としての小説家』を棚から抜いてレジに持っていった。

    既に、赤鉛筆で文字にかかるように太い線を引いた部分がいくつもある。それをまず書き抜いてみようと思う。

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    書き下ろしの長編小説を書くには、1年以上(2年、あるいは時によっては3年)書斎にこもり、机に向かって1人でこつこつと原稿を書き続けることになります。朝早く起きて、毎日5時間から6時間、意識を集中して執筆します。 ...... 毎日だいたい1時間は外に出て運動をします。そして翌日の仕事に備えます。(pp. 182-183)
    毎日5時間か6時間、机の上のコンピュータ・スクリーンの前に ...... 一人きりで座って、意識を集中し、物語を立ち上げていくためには、並大抵ではない体力が必要です。(p.186)
    毎日朝早く目覚めて、コーヒーを温めて大きなマグカップに注ぎ、そのカップを持って机の前に座り、コンピュータを立ち上げます ...... 。そして、「さあ、これから何を書こうか」と考えを巡らせます。そのときは本当に幸福です。ものを書くことを苦痛だと感じたことは一度もありません。(p. 59)

    このような文章を読んで、小説家ではない私も、同じような「仕事」のスタイルになってきていることに気づいた。たしかに、村上春樹氏と同じような幸福感を意識することが私にもあるのである。夜にどんな悪夢を見たとしても、朝無事に小さな書斎でパソコンのディスプレイとキーボード、マウスを置いた机の前に座ることができたとき、自分が考えていることをキーボードのキーを押して画面に並べることをしているとき、幸福感あるいは満足感を味わうことができるのである。

    ただし、私の場合、binge writingとかいうスタイルのようにも思える。例えば、最近について言えば、先週の水曜日(9日前)に「まちづくり協議会の構成と役員」というタイトルでココログに記事を書き始めてから、ほとんど他のことは何もしないで、2年前に集めた資料を調べたり、インターネット上の情報を集めたりして加筆修正をやっている。村上春樹氏のように、仕事は1日6時間までとか決めておいた方がよいのかもしれない。

    「まちづくり協議会の構成と役員」というタイトルで書き始めた私の「作品」は、「『まちづくり協議会』の新役員が選出されたことを『市民センターだより』(6月1日号)で知って考えたこと」というタイトルに変化した。取りあげている団体の関係者からの返答はまだない。2年前にも同じようなことを文書に書いて渡したのだが、無視された形になっていた——ここでは触れないが「自治連合会会費及び社会福祉協議会会費一部返納」は実施された。今回は、「市民センターだより」を読んだことがきっかけで、2年前のテーマを思い出し、復活させた。関係資料は、Evernoteの中に詰まっていた。最新の情報をGoogleで検索することはやったが、人間のように堂々と嘘をつくことがあるChatGPTに頼ったところはない()。

    色々なきっかけでやることや考えることが変わっていくのだということを実感する。町内会に組と班とがある。制度的にも日常生活においても、およそ5世帯が所属する班は、「緊急連絡網」で確認することができるが、ほとんど意味をなしていない。役職は、ローテーション表に従って、会長と会計を組単位で引き受けるルールである。2021年度は、私たちの組に会長と会計とが当たる年度であった。組長、会計、会長のどれかを引き受けることになっていて、私が会計を引き受けることになった。

    もし、会計をやることにならなければ、そして、収支の赤字がずっと続いてきていることが問題視されていなければ——4月に受け取った町内会名義の預金通帳には約184万円の残高があった——、町内会が毎年度拠出する「自治連合会会費及び社会福祉協議会会費」(約11万円)のことなどに関心を持つことがなかったはずである。

    また、「校区3団体」の運営され方の不透明さに気づくこともできなかったはずである。例えば、この「上部」団体の決算報告は、単位町内会で配られたりすることはなく、回覧版で回されることもない。そのような団体では、「住民主体」とか「住民から構成されている」とかいうキャッチフレーズがしばしば使われるのであるが。 数日前に文章の中で「民主主義の学校」という歯が浮きかねない言葉を強引に使うチャンスに巡りあえたのもこの流れの中でである。

    2年前の2021年度に町内会の会計の役職を引き受けることになったおかげで、私は、いまこの文章を書いている。文庫本の『職業としての小説家』という本の感想を書こうとして書き始めた文章なのだが、いつの間にか、自分が最近取り組んでいたことを書くことになっている。


    [注]

    正直に言うと、「非営利組織における役員手当」についてChatGPTに質問してみたことはある。知ったかぶりのChatGPTの、大胆な嘘かもしれない回答は以下の通り。

    非営利組織における役員手当は、一般的ではありません。多くの非営利組織では、役員が無給またはボランティアとして活動しています。これは、非営利組織が社会的な目的の達成や公共の利益の追求を優先するためです。(ChatGPTの回答)

    この考え方を受け入れるならば、市政連絡事務委託料や県広報紙配付委託料は、会計処理の透明化という観点からは、予算の収入として計上すればいいことで、支出項目に「役員手当」の明示が必要だという問題ではない、ということになる。

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    June 07, 2023

    「まちづくり協議会」の新役員が選出されたことを「市民センターだより」(6月1日号)で知って考えたこと

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    1. まちづくり協議会の新役員選出にともなって、まちづくり協議会に「相談役」という役職が新設されたこと。また、それ以外の校区2団体(社会福祉協議会、自治連合会)にもその役職が同時に新設されたようであること。
    2. いままでの例から考えると、同一メンバーが、まちづくり協議会、社会福祉協議会、自治連合会の役員(新設のものを含む)に就任した可能性があること——相互に関係のある複数の団体の役職を同一人物や同一メンバーが務めていれば、「利益相反」の問題が生じる。
    3. おそらく、まちづくり協議会ではなく、社会福祉協議会と自治連合会において「役員手当細則」が変更されるであろうこと。
    4. まちづくり協議会、自治連合会、社会福祉協議会の校区3団体の性格や設立目的の違いが十分に認識されていないこと。「3つの団体は志井校区の住民で構成されている」という説明はミスリーディングである。
    5. 校区レベルの2団体(自治連合会と社会福祉協議会)の重要議題(人事、決算報告や予算案など)が、それらの団体に「校区分担金」を拠出する個々の町内会・自治会の会員に知らされないまま処理されていく状況が続いている。このことから推察されることだが、それらの団体と「住民の自治組織」である町内会・自治会との関係が、ヒエラルヒーの中でとらえられたり、「上意下達」の関係としてとらえられているようだということ。
    6. 言うまでもないことだが、そもそも、町内会・自治会が校区自治連合会に加盟することは任意であり、加盟しなければ「校区分担金」の一部の「自治連合会会費」を「上納」する必要もなくなる。そうしても、町内会・自治会が、市からの各種助成金(街路灯助成金、ゴミステーション管理助成金等)を受け取れなくなるはずはない。
    7.  

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      資料1:町内会の単年度収支の推移
      (予算において支出の第1位と第2位は、役員手当と校区分担金。)

       

    8. 市政連絡事務委託料、県広報紙配付委託料等の会計上の扱いが校区レベルにおいて透明性を欠いていること。
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      資料2:南区自治総連合会会長が発した文書の一部

       

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      資料3:校区自治連合会予算案
      (市及び県からの委託料が計上されていない。)

       

    10. 志井校区まちづくり協議会規約第12条「総会の成立」によれば、総会は、役員——規約第5条で、会長、副会長、事務局員、会計、会計監査を役員と規定している——だけで開かれ、出席者数に委任状提出者数を加えた人数の過半数で成立するという規定になっている。役員会と総会との区別がないのだろうか。)
    11.  


       

      市民センターだより

      市民センターだよりを受け取った。その中に、まちづくり協議会の新役員のリストが掲載されていた。校区自治連合会と校区社会福祉協議会の新役員については、どこにも触れられていないのだが、おそらく、その2つの団体の新役員も同じメンバーなのであろう。

      また、新会長の挨拶文と、「30年あまり自治連合会長を務められた」と新会長が称えたまちづくり協議会前会長の「志井は日本一」というメッセージも載っていた。

      「日本は世界一」という文言は出てこなかったが、そのメッセージの中に「さくら、世界一」という文言が出てきた。桜以外の花の美しさを否定するつもりでないのならば、それに反論するつもりはない。また、かつての軍国主義と「幹がねじ曲げられてきた」(大貫恵美子)桜讃美との関係に言及するつもりもない(そのことについては、市が公園に桜の木を植えるようです。植える場合の桜の木はどの程度の高さでしょうか。)。

      1人の住民(あるいは市民)として、前会長にねぎらいの言葉をかけたい気持ちである。何度かお目にかかって、町内会が拠出する「校区分担金」のことなどで質問をさせていただいたりした。

      Screenshot-20230615-at-62319(みんなでつくる 志井校区の防災)

      前会長の実績について、「北九州市小倉南区志井校区の外部有識者の支援を受けた地区防災計画づくりに関する地域社会学的研究-半構造化面接法によるインタビュー調査及びSCATによる質的データ分析-」というタイトルの論文を、金思穎氏が書いている。関係者のナラティブ(あるいは説明)をそのまま受け入れているところが多く、その方法や内容についてはいくつかの疑問があるが、興味深い叙述も見られる(注1)。

      ところで、まちづくり協議会において新たに設けられた「相談役」というのはどういうポジションなのであろうか。どのように選任され、どのような権限等を持つのであろうか。任期についてはどうなっているのだろうか。

      このポジションは、これまでまちづくり協議会規約に規定されていなかったものである。前会長のために新たに設けられたものと考えていいのかどうか。このことについては、総会の議事録が公表されればその経緯が明らかになることであろう。

       

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      資料4: 市民センターだより

       

       

      まちづくり協議会規約に書いてあること

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      資料5:まちづくり協議会規約

       

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      資料6:まちづくり協議会規約

       

       

      「事務局役員会議」というもの

      まちづくり協議会規約(資料6)には各種団体名がリストにあるが、以下の通知文書(資料7)に見るように、自治連合会と社会福祉協議会とは、まちづくり協議会と「事務局役員会議」(どの団体の規約にも出てこない表現)が同一のようだ。また、その通知の時点で、まちづくり協議会、自治連合会、社会福祉協議会の3団体は、会長も同一人物である。

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      資料7:まちづくり協議会・社会福祉協議会・自治連合会 役員選出結果について、令和3年6月付け

      「管見によれば」と言うべき所だろうが、自治連合会は、町内会・自治会の連合体、社会福祉協議会は、社会福祉に関わる団体、まちづくり協議会は、これ以外の様々な団体等も含めて、それらの間の連携を深めるものなのではないだろうか。この最後の団体は、連絡・調整だけでなく、自治体からの補助金・助成金を地域の諸団体に配付するルートにもなっているようだが。

      「3つの団体は志井校区の住民で構成されており、団体の独自性はありますが、活動は重層的です」(注2)という説明を数年前の総会議事録で見たことがあるが、町内会・自治会、自治連合会、社会福祉協議会、まちづくり協議会の性格や設立目的の違いは、関係者にしっかりと認識されるべきであろう(町内会とその「上部」団体との関係: 校区分担金と市政連絡事務委託料をめぐって)。

      また、相互に関係のある複数の団体の役職を同一人物や同一メンバーが務めていれば、「利益相反」の問題が必ず起こってくる。例えば、校区社会福祉協議会の支出内容と校区自治連合会の支出内容を検討すると、予算を小さく組んでいる校区自治連合会の「利益」のために校区社会福祉協議会の活動内容が操作されているように見える。さらに言えば、手当が支給されないまちづくり協議会の役員のために、社会福祉協議会と自治連合会とが実質的に役員手当を負担していると見ることもできる。

       

      役員を選出するのは総会であること

      志井校区自治連合会・志井校区社会福祉協議会・志井校区自治連合会の会長名で2年前に発された前述の通知には、「事務局役員会議」が「役員を選出し決定」したと書いてある(注3)。しかし、例えば、自治連合会規約では、第8条で、明確に、「会長及び副会長は、会員の中から総会において選出する」「事務局員、会計及び会計監査は、会長が任命し総会の承認を得る。」と規定されている。

      2年以上前に、町内会の会計の任にあったときに、町内会長からその文書を入手して読み、疑問を持ち、校区3団体の関係者に問い合わせの葉書を出そうとして書いた文章を以下に引用する——投函することはなかった(注4)。

      私の職場での経験では、前年度の組合執行部が次年度の役員を推薦する慣行はありましたが、選挙は選挙管理委員会が実施し、総会で選挙結果が承認される手続きになっていたと思います。どのような形を取るにせよ、総会で執行部人事が承認されるという手続きが必要だと思います。また、三団体の総会の構成員は同じではないので、別々に手続きが行われるのが当然ではないでしょうか。

      新役員の選出(すなわち決定)は、今回はどのような形で行われたのだろうか。民主的な組織では当然のことが蔑(ないがし)ろにされているとしたら問題であろう。「民主主義の学校」として地方自治(と地域住民組織)は、大事な存在だと思う。

       

      規約改正・役員選出・役員手当

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      資料8:まちづくり協議会規約

       

      「相談役」の役職は、総会における規約の改正によって新設されたのだろうか。各団体の規約の改正によって、まちづくり協議会だけなく、自治連合会、社会福祉協議会にもこの役職が同時に設けられたのだろうか。また、その方向に進んだのは、校区3団体を一括して運営する前述の「事務局役員会議」あるいは執行部役員会——3団体それぞれの規約にそういう「議決機関」は存在しない——の決定によってなのだろうか。

      また、校区3団体のそれぞれにおいて、新役員が総会で選出され、新役員主導で会則の改正が行われて相談役のポストが新設され、前会長が相談役が任命され、それが総会によって承認されたのだろうか。それとも、「省エネ」的に、校区3団体の総会が同時に開かれて、旧役員が主導する会則改正があり、その場で直ちに新役員の選出(相談役を含む)が行われたのだろうか。

      相談役の新設によって、まちづくり協議会以外の校区2団体の「役員手当細則」も改正されたのだろうか。なお、決算書や予算案の収入の項目に市政連絡事務委託料、県広報紙配付委託料が出てこない場合には、それらは支出の処理が別の形でなされている可能性があるだろう。このことについて、会計監査報告に言及がないのはなぜなのだろうか。

       

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      資料9:志井校区自治連合会細則に従った役員手当

       

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      資料10:志井校区社会福祉協議会細則に従った役員手当

       

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      資料11:令和2年度決算報告書(校区自治連合会)

      上記の表(資料11)の「助成金」の項目は、市政連絡事務委託料、県広報紙配付委託料に対応するものではない。なお、平成31(令和元)年度決算報告では、「南区社会福祉協議会等より」と説明されていて決算額は193,200円——南区社会福祉協議会に確認したところ、同団体からの助成金が自治連合会の収入として処理されることは間違いということであった。

      令和3年度のまちづくり協議会予算案を見ると、まちづくり協議会の目的・機能がそこに現れていることがわかる。

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      資料12:まちづくり協議会予算案(令和3年5月)

      各項目で収入額と支出額とが同額である。自治体からの補助金・助成金を地域の諸団体に配付するルートにもなっているので、非常に公共性の強い団体で、「官製組織」の性格を有しているように感じられる。その点では、住民の自治組織である町内会・自治会とは性格が異なるように思う。

      なお、この予算(案)には市政連絡事務委託料が出てくるが、前述のごとく、それ以外に県広報紙配付委託料(1世帯当たり約50円)が、区自治総連合会から校区に渡されているはずである(ある町内会の単年度収支から辿っていって考えたこと: 校区「社協」・校区自治連合会・区自治総連合会等との会計上の関係)。

      支出の項目に「役員手当」がないのは、まちづくり協議会への参画は自主的かつボランティア的なものとして受け取られているためだろうか。北九州市自治総連合会の決算報告などからもうかがえることであるが、この種の非営利組織においては、役員や理事の活動は、自主的かつボランティア的な性格が強く、報酬や手当が支給されることは一般的ではないということなのだろうか。 

       

      [注]


      [1]

      論文の中には「リーダーシップ」について以下のような叙述があった。この部分などは、「地位と役割の内面化」という表現以外は、被面接者のナラティブを忠実に再現したものなのであろう——規範や役割を内面化することはあるが、地位を内面化するとはどういうことだろうか。 「地域活動や防災活動が形骸化し、共助の意識も低調」であるという観察が当てはまらないユニークな例として、金氏がこの校区をとりあげているようだが、「地域の有力者に根回し」する手法などは、都市化が進行する前の地域共同体においてしばしば見られたパターンではないかと考えざるを得ない。

      年輩者から事務の効率的なさばき方や地域の有力者に根回しをしてから全体の調整に入る手法を指導してもらい、リーダーとしてコミュニティに育てられた。特に、地域のお祭り(蛍祭り)、河川の清掃、ラジオ体操等の年中行事の運営は難しく、年輩者からそのノウハウを継承する形で地位と役割を内面化させ、コミュニティをまとめていけるようになった。このようなリーダー養成の仕組みは、行政からの指示等とは関係なく、地域コミュニティの中で自然にできた仕組みであり、住民はそれを大切にしている。(関東都市学会年報 20、p. 64)

      [2]

      「令和2年度志井校区自治連合会、社会福祉協議会、まちづくり協議会: 総会書面議決結果について」(令和2年5月18日付け)では、総会書面議決について 次のような意見が出たとして記録されている(資料13)。

      「議決権の無い議案がある」という意見が出ているのは、校区3団体のそれぞれを構成する団体等が同じではないことと関連しているのであろう——「まちづくり協議会」の構成(第4条)には、自治連合会、町内自治会長、社会福祉協議会等がリストに出てくるが、自治連合会や社会福祉協議会の構成は、これとは異なる。例えば、自治連合会の会員は「校区内に居住するすべての町内自治会会員及びその組織とする」(第4条)となっている。校区内の町内会・自治会の連合体という基本的性格から判断すれば、実質的には町内会・自治会の会長24人が「自治連合会総会」に出席するわけであろう。 そうであれば、議案が5本あって、それぞれについて、賛成52、反対2と記録されているが、この結果を、校区3団体それぞれの総会議決結果とみなすことはできない。また、議案を別に作成すれば同一議場でよいという問題ではない。

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      資料13:令和2年度志井校区自治連合会、社会福祉協議会、まちづくり協議会、 総会書面議決結果について

       

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      資料14:社会福祉協議会の理事会の構成
      (総会も理事会とメンバーが同一と規約第6条に規定されている。なお、リストの1番目の「自治連合会」は、「自治連合会長」ということなのだろうか、それとも、一定の範囲の自治連合会役員を指すのであろうか。)

        

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      資料15:志井校区まちづくり協議会規約第12条「総会の成立」
      (志井校区まちづくり協議会規約第12条は、なんとも不可解。会の構成に関する第4条では、自治連合会、町内自治会長、社会福祉協議会、小・中PTA会長、小中学校長、自治公民館長、民生・児童委員、保護司、青少年育成会、少年補導委員、少年補導員、子ども会育成会、老人クラブ、体育委員会、消防団の15の団体等があげられているが、「総会」は、まちづくり協議会役員——規約第5条で、会長、副会長、事務局員、会計、会計監査を役員と規定している——だけで開かれ、その過半数で成立するという規定のようだ。規約に役員会の規定はなく、役員会を総会と称しているのであろうか。いずれにせよ、議決機関としての総会が役員だけで開かれるというのは常識に反する。)

        

      [3]

      これよりも13日前の6月2日付けで以下のような文を含む通知が発されている。タイトルは「まちづくり協議会・社会福祉協議会・自治連合会: 役員選出について」で、発したのは、志井校区まちづくり協議会・志井校区自治連合会・社会福祉協議会の3団体の会長名での同一人物であり、宛名は「各役員様」となっていた。(この場合の「役員」というのは、各団体(「構成」の異なる)において総会への参加資格を有するメンバー全員を指すものではないと解釈してよいのであろうか。)

      今回、書面にて、選出する、会長・副会長に立候補希望の方は、6月10日(木) 19時までに志井市民センター事務局まで届けてください。立候補の届け出が ない場合には、まちづくり協議会・社会福祉協議会・自治連合会事務局役員会議にて人選し選出いたします。どうかご了承ください。

       

      [4]

      以下のような「葉書草稿」(2021年9月30日付け)も手元にある。結果的には、何ヶ月たってもその年度の「総会の議事録」を目にすることはできないままで、現在に至っている。

       五月十日に三団体の総会が開かれたようですが、総会配付資料では、三団体とも「総会次第」に「予算案」の審議や「役員選出」が含まれています。五月十日の総会で予算案等は成立したのでしょうか。

       社会福祉協議会及び自治連合会の令和三年度予算案の予備費の「各町内への返納」ということはいつ実施されるのでしょうか。

       町内会長の協力を得て、「まちづくり協議会・社会福祉協議会・自治連合会 役員選出結果について」(令和三年六月十五日付)を読ませて頂きました。それによれば、六月十四日に「事務局役員会議」で「役員を選出し決定」したとなっています。三団体の規約のどの条文に基づいてそのような形での決定がなされたのでしょうか。

       総会の議事録(決定事項の報告)が出てこないのはなぜなのでしょうか。町内会会長から様子を聞くことができるのでしょうか。

        

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    June 03, 2023

    町内会とその「上部」団体との関係を会計上の記述に注目して分析した。

    各世帯から集めた「町内会費」に相当する額が、役員手当と上部団体(校区社協と校区自治連合会)への拠出金に充てられていることには驚いた。また、この2つの項目が、町内会予算において支出の第1位(約22万円)と第2位(約11万円)を占めていることにも。
    この「上部」団体の決算報告は、単位町内会で配られたりすることはなく、回覧版で回されることもない。そのような団体では、「住民主体」とか「住民から構成されている」とかいうキャッチフレーズがしばしば使われるのであるが。
    (町内会とその「上部」団体との関係: 校区分担金と市政連絡事務委託料をめぐって)
    以下は、小倉南区自治総連合会の令和3年度の決算報告、令和4年度の予算である。収入の部の「会費」が各校区からの拠出金であろう。
    収入としては、会費の4倍近くの「助成金」が計上されていて、極めて公共性の強い団体であることがわかる。「手数料」についてはこの決算書からは把握できないが、令和2年度の決算書によれば、「県広報紙配付委託料」が中心のようだ(令和2年度の場合、2,683,400円)。
    逆に言えば、極めて公共性の強い団体でありながら、「下部」の団体、町内会加入世帯——校区自治連合会と町内会・自治会は市政連絡事務委託料を配付されている——からの拠出を当てにしている点が、理解しがたいところである。
    (ある町内会の単年度収支から辿っていって考えたこと: 校区「社協」・校区自治連合会・区自治総連合会等との会計上の関係)

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