Abschiedsfarben
ベルンハルト・シュリンク『別れの色彩』(松永美穂 訳、新潮社)を読み終えた。 訳者の松永美穂さんは、「別れ」というよりも「老い」がテーマになっていると「訳者あとがき」に書いている。そうだと思う。老人になると自分の人生で経験した色々な別れが思い出されてくるわけだ。
短編が9本あり、それぞれがさまざまな別れを扱っているのだが、テレビの海外ドラマを見ているときのようで、描かれている状況が自分の人生と同じようだと感じるところはあまりない。著者の人生と自分の人生とがかなり違ったものであるためなのであろう。しかし、9篇の小説は自分の人生を振り返るきっかけを与えてくれている。少なくとも、自分が経験したさまざまな別れについて考えてみることを正当化する役割を果たしている。