文化企画課(市民スポーツ局あるいは都市ブランド創造局)に、教育委員会や文化財保護審議会に代わって文化財保護の重要なものを決定する権限はない。
大庭千賀子副市長の、山内涼成議員の質問に対する答弁(令和6年2月 定例会(第1回) 02月28日-03号)
「先ほどから局長たちが言っているように、どうしても集約される対象の施設がまだ一部、現行の耐震基準を満たしていないような建物が残っております。これにじゃあ多額のお金をかけて耐震のための補修工事をするかというと、北九州市の財政状況を考えると、それはなかなか難しいこともございます。ここで立ち止まって調査をするということはイコール価値づけの調査[太字は申請者。以下同様。]につながり、それは文化財指定につながるための最初のプロセスの一歩ということで、これは私どもは、この地で複合公共施設を造ろうと思ったら、残念ながらそれはなかなか難しいということで、そこには入れないと。」
注:以下において出てくる「市民文化スポーツ局文化企画課」は、2024(令和6)年4月1日付けの組織改正により、「都市ブランド創造局文化企画課」となっている。
1. 北九州市教育委員会の権限事務の一部を教育長に委任し又は臨時に代理させる規則
教育委員会規則第7号では、教育委員会の権限事務の一部を教育長に委任することを規定しているが、文化財保護に関する5項目は、除外されている。つまり、この5項目の権限事務は、教育長に委任されていない。
2. 北九州市教育委員会事務専決規程
北九州市教育委員会事務専決規程によれば、文化財の保護及び活用に係る事業の実施、文化財の調査、指定及び管理に係る事業の実施、文化財保存事業の助成に係る事業の実施が列挙され、また、文化財保護審議会に関する事務を含めてそれらを市民文化スポーツ局長等の専決事項としている。ただし、専決事項の欄を見れば、「重要なものを除く」という限定が付けられている。最後の項目にはその限定が付けられていないが、この「文化財保護審議会に関する事務」は、北九州市文化財保護審議会規則第9条を参照すれば、審議会の「庶務」にあたるものである。審議会の重要な事項について決定する権限が市民文化スポーツ局長等に与えられているわけではない。
3. 北九州市文化財保護審議会規則
(所掌事務) 第2条 審議会は、北九州市の文化財について、教育委員会の諮問に応じ[太字は請求者]、調査審議し、答申する。
(庶務) 第9条 審議会の庶務は、市民文化スポーツ局文化部文化企画課において処理する。
この規則によれば、審議会に諮問をおこなうのは、教育委員会と規定されている。
また、「市民文化スポーツ局文化部文化企画課」が担当するのは、審議会の「庶務」となっている。
4. 北九州市教育委員会の権限に属する事務を市長の補助機関たる職員等に補助執行させることに関する規則(教育委員会規則第16号)
この規則によれば、「(教育委員会の権限に属する事務のうちで)市民文化スポーツ局長等に補助執行させる事務」として、「(4)文化財の保護及び活用に関すること。 (5)文化財の調査、指定及び管理に関すること。 (7)埋蔵文化財の保護に関すること。 (8)文化財保護審議会に関すること。」が列挙されている。しかし、「文化財保護の重要なもの」は、「補助執行」の意味からすれば、教育委員会での審議なしに決定されることはありえない
文化財保護審議会への諮問は、教育委員会の権限である。市民スポーツ局(あるいは都市ブランド創造局)のおこなうのは「補助執行」であって、文化財保護の役割は、市の規定上も、合議制の執行機関である教育委員会に残っている。 門司港地域での複合公共施設の建設を担当する市長部局の判断をそれまま受けいれ、初代門司港遺構の保存に関して文化財保護審議会への諮問をおこなわないとしたら、教育委員会は、文化財保護法に違反し、文化財保護上の重要な権限を放棄していることになる。
文化財保護上の重要なことは、北九州市の規則上も、教育長や市長部局の専決事項ではない。 「文化財保護の重要なもの」は、「補助執行」の意味からすれば、合議制の執行機関である教育委員会での審議なしに決定されることはありえない。文化企画課(市民スポーツ局あるいは都市ブランド創造局)に、教育委員会や文化財保護審議会に代わって文化財保護の重要なものを決定する権限はない。
北九州市議会の村上さとこ議員が2024年2月29日に文化庁に問い合わせ、文化資源活用課より3月5日に得られた回答によれば、「文化財保護に係る重要事項」とは、 純粋に文化的価値の観点からなされることが要請される地方文化財の指定に係る業務等であり、 「本来の職務権限者である教育委員会に残る一定の権限」とは、文化財の指定等の重要事項に係る権限であるということである。 「重要事項に係る業務については、地方自治法第180条の7に基づく事務委任・補助執行を行うことは想定しておりません」というのが 文化庁文化資源活用課の見解である。
ダウンロード - 北九州市職員措置請求書(2024年11月13日提出)
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