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December 14, 2024

2013年に佐賀県であった文化財保護にかかわる住民監査請求の例と、2018年におこなわれた「地教行法」及び「文化財保護法」の改正について

文化財保護にかかわる住民監査請求の例を調べてみると、次のようなことがわかった。

佐賀県で「メガソーラー反対の監査請求」が2013年1月からあったということである。最終的に2014年7月29日には総勢1,470人の市民が監査請求に加わったが、佐賀県監査委員は、「門前払いの判断を続け、佐賀県もその方針を全く見直すことはなかった」。

却下の理由は、「財務会計上の行為の違法性・不当性を具体的かつ客観的に示しているとはいえない」ということであった。

資料:
『吉野ヶ里遺跡にメガソーラーはいらない:世界遺産登録に向けて』(花伝社、2018年4月発行)

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2018(平成30)年に改正された「地教行法」と文化財保護法

地方公共団体における文化財保護の事務教育委員会の所管とされているが、条例により地方公共団体の長が担当できるようにする。【地教行法第23条第1項】
地方公共団体の長が文化財保護を担当する場合、当該地方公共団体には地方文化財保護審議会を必置とする。【文化財保護法第190条第2項】

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出所: 文化財保護法改正の概要について(文化庁、2018(平成30)年7月)

 

門司港地域複合公共施設整備事業に関する住民監査請求

北九州市教育委員会及び北九州市長を請求の対象とし、北九州市が指名競争入札を実施し落札者と門司港地域複合公共施設既存構造物とりこわし工事契約及び同工事監理業務委託契約を結ぶという財務会計上の行為を行ったことに関して、この監査請求書を提出する。
北九州市教育委員会及び北九州市長が、文化財保護法及び北九州市の定める諸規則に違反して、埋蔵文化財の価値付けをおこなわず、また、文化財保護審議会での審議によらず、初代門司港駅遺構のとりこわしを決定し入札を実施し契約を業者と結んだこと。また、とりこわし工事監理業務委託の入札において特定の業者が落札となる談合が行われたと思料されること。さらに、複合公共施設を建設するために北九州市が購入した土地から出現した初代門司港駅遺構は、考古学や歴史学の専門家がこぞってその文化財としての価値が大なることを認めているものであり、文化財保護のルールに反した形でそれが破壊されることは、極めて不当なことであること。これらの理由でその行為が不当であるとともに違法性が高い。
損害という観点からは、市有地に発見された貴重な文化財が破壊されようとしていること、また、談合が行われた入札が承認されることによって北九州市に経済的損害が生じている可能性が高いことなどの点で北九州市に損害が生じている。
門司港地域複合公共施設既存構造物とりこわし工事契約及び同工事監理業務委託契約の破棄を求めて監査請求書を提出する。
(2024年11月13日提出、11月21日受理)

文化財保護についての教育委員会と文化財保護審議会の役割

地方文化財保護審議会は、都道府県又は市町村の教育委員会の諮問に応じて、文化財の保存及び活用に関する重要事項について調査審議し、並びにこれらの事項に関して当該都道府県又は市町村の教育委員会に建議する。
— 文化財保護法第190条第3項

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