バックキャスティング思考は万能か? 地域コミュニティの現場から聞こえる声
皆さんは「バックキャスティング」という言葉をご存知ですか?これは、まず理想の未来像を描き、そこから逆算して「今、何をすべきか」を考える思考法です。一見、未来志向で素晴らしいアプローチに思えますが、実はこの思考法が地域コミュニティの現場でうまく機能しないという声が少なくありません。今回は、いくつかの課題点について考えてみたいと思います。
現場の現実と未来志向のズレ
地域コミュニティの現場で活動する自治会長の方々からよく聞かれるのは、目の前の差し迫った課題をどうにかしてほしい、という切実な声であるようです。例えば、自治会離脱者の増加や、若い世代の未加入問題など、まさに「今」起きている課題です。これらを地道に解決していくことが、結果としてより良い未来につながるという考え方は自然な感覚でしょう。未来を語る前に、足元の課題を解決したいという現場の思いは、未来像を描くだけでは解決できない現実の壁を示しています。
「お上」の意図として受け取られてしまう懸念
市の担当者が提示する「未来の仮説」が、会議の参加者にとって「市が望む方向性」として受け取られてしまうケースも散見されます。これにより、本来は多様な意見を出し合うべき場が、市の意向を忖度する場になってしまう可能性が指摘されています。これでは、本当に地域に根ざした多角的な議論が生まれることは難しく、形式的な合意形成に留まってしまうリスクがあります。
「自分ごと」として捉えてもらう難しさ
また、ワークショップなどで未来像を考えてもらう際、「自分ごと」として捉えてもらうことが非常に難しいという課題もあります。抽象的な「地域の未来」ではなく、「30代夫婦が子育てする上でどんな暮らしがしたいか」といった個人的な視点を取り入れるなど、参加者が身近な問題として考えられるような工夫が不可欠です。未来のビジョンは、具体的な個々の生活の延長線上にこそあるべきでしょう。
焦点が定まらないビジョン
さらに、「コミュニティのビジョン」が、行政の政策目標なのか、住民が目指す理想像なのか、曖昧になっている場合もあります。この焦点の不明確さは、具体的な行動計画への落とし込みを困難にし、結局は誰もが共感できるビジョンとならない原因となります。
バックキャスティング思考は、大きな変革を起こすためには有効なツールです。しかし、地域コミュニティのような多様な価値観と利害関係が交錯する場においては、一方的に押し付けるのではなく、現場の声を丹念に拾い上げ、現実的な課題解決と未来像の共有をバランスよく進めることが重要です。
(NotebookLMを利用した。)
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