グローバリズムとグローバリゼーション
「反グロ(ーバリズム)」という言葉がグローバリズムに反対する立場として使われることがあるようだ。 そこで考えたのだが、グローバリズムに反対する立場は、グローバリゼーションの事実を前提とするものなのかそれともそれを前提としないものなのかということである。ここで、グローバリズムとは、グローバリゼーションという事実がもたらす変化を特定の価値観で推進しようとする思想やイデオロギーということになるだろう。
グローバリゼーション(グローバル化)は、経済的な面からだけではなく、技術的な面、政治的な面、文化的な面などからもとらえることができる。技術的な面では、先進的な技術が瞬く間に世界中で普及すること、政治的な面では、1国の政治的な動きが他国にインパクトを与えて同じような政治的動きが世界中でおこることなどがある。文化的な面では、各国各地の固有な食文化や娯楽などが失われる「消費文化の同質化」が危惧されている。
グローバリゼーションというのは、事実であると思う。そして、このことは、ある程度不可逆的な過程であるのではないだろうか。
グローバリゼーションは、経済的相互依存だけでなく、技術の伝播、政治的潮流の国際化、文化の同質化(注1)などの諸側面があるが、社会学者であるアンソニー・ギデンズに従って1960年代後半の通信技術の発達を契機に起こったものとして位置づければ、世界が相互に結びつく不可逆的な事実であり、もはや避けては通れない過程だと考えられる(注2)。 したがって、グローバリゼーションへの反対は、この現実をいかに受け止め、対応していくかを問うべきであり、単なる「理想論」や現状否定に終わるべきではない。
「反グロ」とは異なるが、グローバル化に逆行する動きや現象を指すDeglobalizationという概念があるようだ(注3)。そのような動きや現象がさらに強まっていくとしたら、不可逆的な過程としてとらえてきたこれまでのグローバル化論をどう組み立て直すかが課題となるのであろう。
[注]
1. ハリウッド映画や、米国で創業されたファストフード店などが思い浮かぶ。ただし、外国の文化を取捨選択して受け入れるということは否定的にとらえるべきではないのかもしれない。加藤周一氏は、かつて、日本文化の本質はその「雑種性」にあるとのべている。
2. 1960年代後半は、今日の情報社会の礎が築かれた重要な転換期である。この時期、米国国防総省の研究機関がARPANETというネットワークの原型を開発した。これは、情報を小さな塊(パケット)に分割して送信する「パケット通信」という画期的な技術に基づき、後のインターネットの直接的な起源となったものである。
また、静止衛星技術の実用化も進み、テレビや電話の国際通信は飛躍的に発展した。1964年の東京オリンピック中継を皮切りに、インテルサット1号といった商用衛星も打ち上げられ、大陸間の情報伝達が瞬時に行われるようになった。
これらの技術革新は、コンピュータの小型化・低価格化と相まって、情報を地球規模で共有する仕組みを構築し、今日のグローバル化を加速させる重要な要因となったのである。
3. 「消費者」としての国民は賃金コストの安い国で生産された製品を安く手に入れることができるが、働く場所が閉鎖されていくことや企業から支払われる法人税収の減少などを目撃することになる。グローバル化に対する批判は、現在は、さまざまな立場からのものがありえ、経済的な「保護主義」からのものが目立ってきているようだ。
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