衆院選2024年福岡11区の政党と候補者の対応分析
市町村別の政党得票数(比例代表)と市町村別の候補者得票数(選挙区)とを結合して対応分析をおこなった。 市町村別の政党得票数と候補者得票数データから、政党、候補者、地域の三者間の関係性を可視化することを目的としている。 グラフ上で政党とその候補者がどの程度離れているか、どの地域がどの政党や候補者に引っ張られているか(正確には、「その地域において、その候補者の得票率が全体の平均と比べて相対的に高いか」)などに注目することができる。
村上候補のポイントに苅田町や行橋市が引きつけられ、さらに、出口調査で報道されていたことと一致することだが、日本維新の会支持者だけでなく社会民主党や参政党、国民民主党の支持者も引きつけられている様子が見てとれる。
武田候補の周囲を添田町、香春町、赤村が囲んでいる。しかし、興味深いことに、自民党の位置から遠く離れた位置にある。自民党は別の象限に位置している。
社会民主党の志岐候補に田川市は引き寄せられているが、志岐氏と社会民主党の距離よりも志岐氏とれいわ新選組との距離の方がグラフ上で近い位置に描かれている。
対応分析のグラフから読み取れる政党とそのその政党の候補者の位置の隔たりは、上記のCOR(候補者超過達成比率)の値と関連しているはずである(MurakamiとJIP、TakedaとLDP、ShikiとSDP)。→ 候補者がどれだけ政党の基盤票を超えて幅広い有権者の票を包含できたか(2024年衆院選福岡11区)

[分析に用いたデータと略号について]

重要キーワード解説:福岡11区の事例から
はじめに:選挙の「なぜ?」を解き明かす道具
衆議院選挙福岡11区の分析を例として、選挙結果の裏側にある「なぜ?」を深く理解するための重要なキーワードを解説します。一見すると単なる数字の羅列に見える選挙データも、統計分析という道具を使うことで、有権者の動向や候補者と政党の関係性をいきいきと可視化することができます。この解説を通じて、データから選挙を読み解く面白さを体験していきましょう。
--------------------------------------------------------------------------------1. 選挙の基本:2つの投票方法
衆議院選挙では、有権者は基本的に2つの票を投じます。これが「選挙区」と「比例代表」です。それぞれの仕組みを理解することが、分析の第一歩となります。
1.1. 選挙区制度:地域を代表する「一人」を選ぶ
選挙区制度とは、全国を細かく分けた選挙区ごとに、一人の代表者を選ぶ方法です。分析資料にある「市町村別の候補者得票数(選挙区)」というデータがこれにあたります。有権者は、自分の住む地域の代表になってほしい「候補者」個人の名前を書いて投票します。
1.2. 比例代表制度:支持する「政党」を選ぶ
比例代表制度は、有権者が支持する「政党」の名前を書いて投票する方法です。分析資料の「市町村別の政党得票数(比例代表)」というデータがこれを示します。全国(またはブロックごと)で各政党が集めた票の数に応じて、議席が配分されます。
1.3. 2つの制度の比較
この2つの制度の最も重要な違いは、投票の対象です。
投票の対象 説明選挙区 候補者個人比例代表 政党--------------------------------------------------------------------------------
ここまでで選挙の基本的な仕組みをとりあげました。次に、これらの投票データがどのように分析され、有権者の隠れた投票行動を明らかにするのかを見ていきましょう。
2. 対応分析:データに隠された「関係性」を可視化する
ここでの選挙分析では、複雑なデータを直感的に理解するために「対応分析」という統計手法が用いられます。
2.1. 対応分析とは何か?
対応分析の目的は、「政党、候補者、地域の三者間の関係性を可視化すること」です。難しい数式を追うのではなく、市町村ごとの選挙区(候補者)と比例代表(政党)の得票データを使い、それぞれの関係性を一枚の「地図」のようにグラフ上に描き出します。このグラフを見ることで、どの要素が互いに「近い」関係にあり、どの要素が「遠い」関係にあるのかを一目で把握できます。
2.2. 対応分析で何がわかるのか?
この分析グラフからは、主に以下の3つのような重要な関係性を読み取ることができます。
政党と候補者の「距離感」 グラフ上での位置関係は、所属政党と候補者の支持基盤の重なり具合を示します。例えば、福岡11区の分析では、武田候補が所属する自民党から「遠く離れた位置にある」ことが示されました。これは、候補者が政党の基本的な支持層とは異なる層から票を得ている可能性を示唆します。
候補者と地域の「引力」 特定の候補者と地域の位置が近い場合、その地域でその候補者が特に強い支持を得ていることを意味します。分析例では、村上候補のポイントに「苅田町や行橋市が引きつけられ」ている様子が描かれており、これらの地域が村上候補の強力な地盤であることがわかります。
候補者と他党支持者の関係 党派を超えた支持の広がりも可視化されます。村上候補は、日本維新の会だけでなく「社会民主党や参政党、国民民主党の支持者も引きつけられている」ことが示されました。また、社会民主党の志岐候補は、自身の所属政党よりも「れいわ新選組との距離の方がグラフ上で近い位置に描かれている」ことが指摘されており、候補者個人の思想や魅力が、所属政党の枠を超えて支持を集めている様子が読み取れます。
このように、グラフ上の「位置」と「距離」を読み解くことで、地盤の強さ、党との一体性、そして無党派層への浸透度といった、候補者ごとの選挙戦の「質」の違いを浮き彫りにすることができるのです。
--------------------------------------------------------------------------------このようにグラフ上の「距離」は、候補者と政党、そして有権者の関係性を直感的に示してくれます。では、この「距離」を数値で評価する指標が次に解説するCORです。
3. 候補者超過達成比率(COR):候補者の「個の力」を測る指標
対応分析で視覚的に捉えた関係性を、より具体的に数値で評価するのが「候補者超過達成比率(COR)」です。
CORとは、「候補者がどれだけ政党の基盤票を超えて幅広い有権者の票を包含できたか」を示す指標です。つまり、その候補者が「比例代表」で示される党の基礎支持層に安住せず、自らの魅力でどれだけ多くの「選挙区」票を上乗せできたか、その「個の力」を数値化したものです。
3.2. CORと対応分析の関係
CORの値は、対応分析グラフにおける政党と候補者の距離と強く相関します。グラフ上で所属政党から遠い位置にいる候補者ほど、政党の枠を超えて支持を集めていることを意味し、CORの値も高くなる傾向があります。(ただし、政党と候補者との距離が遠いことは、CORが低いことと結びついていることもありうる。 → 政党と候補者との距離が、高いCOR値と結びついていたのが衆院選2024年福岡県11区の場合である。)
--------------------------------------------------------------------------------まとめ:キーワードを繋げて選挙を深く読む
本稿で解説した4つのキーワードを繋げることで、選挙結果を立体的に理解できます。
有権者は「選挙区」で候補者個人に、「比例代表」で政党に投票します。
この2種類の投票データを使い「対応分析」を行うと、候補者・政党・地域の関係性が地図のように可視化されます。
そのグラフ上の「政党と候補者の距離」は、候補者個人の集票力を示す「COR」という数値指標と連動しています。
これらのキーワードを使いこなすことで、私たちは選挙結果の裏に隠された有権者の選択の「なぜ」を、データに基づいて解き明かすことができるのです。
→ ★データで探る福岡の選挙動向:メモの整理
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