【解説】福岡参院選データが示した“3つの異変”:市部も郡部も揺らす、新たな政治潮流とは
2025年の参議院福岡選挙区は、自民・公明が議席を維持するという、表面上は安定した結果となった。しかし、地域別得票データを対応分析(Correspondence Analysis)によって可視化すると、従来の政治地図では説明しきれない三つの異変が浮かび上がる。本稿では、72地域の相対得票率にもとづく分析から、その変容の核心を整理する。

| 候補者名 | 略号 |
|---|---|
| かわもと健一(国民民主党) | KWM |
| しもの六太(公明党) | SHM |
| とみなが正博(日本誠真会) | TMN |
| なす敬子(社会民主党) | NAS |
| 中田ゆうこ(参政党) | NKD |
| 伊藤博文(日本維新の会) | ITO |
| 古川あおい(チームみらい) | FRK |
| 山口ゆうと(日本共産党) | YMG |
| 村上成俊(NHK党) | MRK |
| 松山まさじ(自由民主党) | MTS |
| 森けんたろう(日本保守党) | MOR |
| 沖園リエ(れいわ新選組) | OKS |
| 野田くによし(立憲民主党) | NOD |
[1] "門司区" "小倉北区" "小倉南区" "若松区" "八幡東区" "八幡西区" [7] "戸畑区" "東区" "博多区" "中央区" "南区" "城南区" [13] "早良区" "西区" "大牟田市" "久留米市" "直方市" "飯塚市" [19] "田川市" "柳川市" "八女市" "筑後市" "大川市" "行橋市" [25] "豊前市" "中間市" "小郡市" "筑紫野市" "春日市" "大野城市" [31] "宗像市" "太宰府市" "古賀市" "福津市" "うきは市" "宮若市" [37] "嘉麻市" "朝倉市" "みやま市" "糸島市" "那珂川市" "宇美町" [43] "篠栗町" "志免町" "須恵町" "新宮町" "久山町" "粕屋町" [49] "芦屋町" "水巻町" "岡垣町" "遠賀町" "小竹町" "鞍手町" [55] "桂川町" "筑前町" "東峰村" "大刀洗町" "大木町" "広川町" [61] "香春町" "添田町" "糸田町" "川崎町" "大任町" "赤村" [67] "福智町" "苅田町" "みやこ町" "吉富町" "上毛町" "築上町"

『対応分析入門:原理から応用まで』(Sten-Erik Clausen著、藤本一男氏の訳・解説、オーム社、2015年)の94-100ページを参照。
1. 都市部に存在する「主要投票パターン」
対応分析は、ここでは、候補者と地域との関係を視覚化する手法として使われている。分析の中心となった「第1軸」は、全体の約51%の変動を説明する主要な傾向として抽出された。
この軸の右側には、古川あおい(チームみらい)、かわもと健一(国民民主党)、森けんたろう(日本保守党)の3候補が位置し、これらの支持は福岡市の博多区・中央区に集中していた。利便性や豊かさを重視する“都市型の価値観”が背景にあるとみられる。
2. しかし、都市部最多得票は別の候補だった
ところが、実際に博多区・中央区で最も得票率が高かったのは、この3候補ではなかった。最多得票は、対応分析では目立たなかった参政党の中田ゆうこ候補だった。
対応分析はあくまで「パターンの類似性」を示すため、軸上で主要位置を占めることと得票の多さは一致しない。それでも、中田候補が都市部で最多得票を獲得した事実は、"都市型のメインストーリーとは異なる"価値観が多数派を形成した可能性、あるいは、都市の豊かさの裏側にある不満層の存在を強く示唆している。
3. 参政党支持は都市部と非都市部を同時に浸食している
中田候補の支持は都市部にとどまらない。都市部とは対照的な非都市部の添田町や川崎町でも、地元組織が優位な地域にもかかわらず、4位・3位と一定の票を獲得していた。
これは、参政党支持が従来の「都市=リベラル / 農村=保守」(あるいは「都市=革新 / 農村=保守」)という政治地図を超えて広範に拡がりつつあることを意味する。
静かに進む“地殻変動”
参政党作成憲法案の一部
参政党の公式文書には、国民主権や立憲主義と整合しない内容が含まれ、また、排外主義的と評価される主張を掲げている。その支持が都市部・非都市部の両方に広がる現象は、政治に関心を持つ市民として見逃すことができない。この新たな潮流が今後の日本政治にどのような影響を及ぼすのか。注視が必要だ。
本稿のデータは地域ごとの相対得票率に基づくものであり、個票データ(年齢・所得・職業など)を含まないため、有権者の動機や価値観を直接的に読み取ることはできない。しかし、都市・非都市の双方で参政党支持が伸びているという結果は、近年の経済的状況と関連している可能性がある。
もしかすると、以下のような経済学者の指摘が、この「極端な言説の政治勢力」の台頭を説明するものかもしれない。
「儲かっても溜め込んで、実質賃金の引き上げも、人的資本投資にも慎重な大企業が長期停滞の元凶であることを明らかにしました。」
「イノベーションには収奪的なものと包摂的なものの二つのタイプがあって、前者は恩恵が一部の人に偏り、むしろ多くの人を苦しめます。」
「マクロ経済環境の下で、長期雇用制の枠外にいる人々がとりわけ苦境に陥っているから、日本版の『忘れられた人々』がアンチ・エスタブリッシュメント層を形成し、極端な言説の政治勢力を支持し始めているのではないかと心配されます。」
-- 河野龍太郎『日本経済の死角:収奪的システムを解き明かす』(ちくま新書、2025年2月)
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