COR(候補者超過達成比率)の分布(参院選2025年福岡のデータ)
The COR( Candidate Overperformance Ratio) is defined as a ratio that compares the candidate's individual vote-gathering power (V_Cand) to the basic proportional representation votes of their affiliated political party (V_Party,Base)
ここでおこなう分析は、公開された統計データに基づき、日本の選挙・社会構造を数理的に記述しようとする試みです。ここで用いるCOR(Candidate Overperformance Ratio:候補者超過達成比率)は、以下の数式で定義されます。この指標は、候補者がその地域で「政党票の何倍の票を集めたか」という集票の強度(増幅率)を測定する量的な指標です。 分子の部分は、候補者個人の得票数(選挙区)、分母の部分は、所属政党の比例代表における得票数(基礎票)となっています。 比例代表の得票数は、候補者が得票した同一市町村における所属政党の比例代表票を用いています。 1.0を超えれば、政党の基礎票以上の集票力を発揮していることを示します。なお、比例票が極端に少ない市町村では COR が大きくなりやすく、この場合は「個人の動員力」というより「政党基礎票の希薄さ」を反映している可能性があります。
本ブログの分析は、公開された統計データに基づき、日本の社会構造を数理的に記述しようとする試みです。本ブログにおける「COR」の定義について、改めて明記します。
COR = 候補者の得票数(選挙区)÷ 所属政党の得票数(比例代表)
これは、選挙における「個人票」と「政党票」の比率を算術的に算出した数値です。この比率は、地域の政治的風土や候補者の活動量、選挙区の特性を記述する統計的な指標であり、候補者や住民について市民としての優劣を評価するものではありません。
1. CORの箱ひげ図

2. 政党及び候補者の得票数の対応分析
3. 対応分析との併用による質的分析
次の2つのグラフは、地域・政党・候補者に対する対応分析(上記のグラフ参照)の第2軸座標に関するものです。CORの値と第2軸座標との関係、第2軸座標と選挙での得票率との関係をとりあげています。対応分析では政党と候補者の距離が可視化されますが、CORの値と第2軸座標の値は、それぞれの指標が測定している「政治的データの次元」が定義上異なっています。計算の対象が「絶対的な得票倍率」か「相対的な地域分布」かという点で、本質的に異なる性質の指標です。
COR(Candidate Overperformance Ratio)は、候補者個人の得票(VCand)を所属政党の比例代表の基礎票(VParty,Base)で割った「量的」な比率です。これは、その地域で「政党の何倍の票を集めたか」という集票の強度(増幅率)を測定します。これに対して、 対応分析における距離の定義とは、複数の市町村における「得票の分布パターン(プロファイル)」の類似性を測定します。プロット上で政党と候補者の距離が近い(直結型)ということは、CORが「高いか低いか」に関わらず、「政党が票を取っている場所で、候補者も同様の割合で票を取っている」分布構造の同一性(地域的な支持基盤の重なり)を意味します。
上記グラフの第2軸座標値は、ここでは、以下のように候補者データのみを取りだし標準化(Zスコア化)をしています。
# 対応分析 (CA) の実行 res.ca <- CA(df_matrix, graph = FALSE) # 第2軸座標の抽出と標準化 (scale関数の適用) # 17列目から29列目が候補者データ w <- res.ca$col$coord[17:29, 2] w_scaled <- as.data.frame(scale(w)) colnames(w_scaled) <- "Axis2_Zscore" (以下省略)

次のグラフは、全体として、政党と候補者のCA空間上の距離(ここでは第1軸と第2軸の2次元上で計算したが、全次元とするべきかは[別稿]で検討した。)が遠くなるほど、県全体での集票倍率(COR)が低下するという緩やかな傾向(負の相関)があることを示しています。 これは、「所属政党が本来持っている地域的な支持基盤(地盤)」から離れた戦い方を選択すると、多くの場合、効率的な集票が難しくなるという実態を裏付けています( これは因果関係を示すものではなく、あくまで構造的な対応関係を示す経験的傾向です)。 CORと対応分析を併用することで、 当落では捉えられない「選挙構造の質的差異」が初めて可視化されます。
4. メモ:政党得票率とCORの関係
比例代表(PR)における政党得票数が極端に少ない市町村では、CORは過大に算出されやすい。このような場合、高いCORが候補者の真の動員力を反映しているのか、それとも単に政党の基礎票が希薄であることを示しているにすぎないのかを、慎重に区別する必要がある。
したがって、CORは単独で解釈されるべき指標ではなく、対応分析(CA)における政党と候補者の位置関係と併せて評価されて初めて、分析上の意味が確定する。
以下では、数値自体はそのまま受け取りつつ、次のような解釈が可能であることを示す。
4.1 分析上の操作的ルール
対応分析(CA)のプロットにおいて、候補者と所属政党との距離が近い場合、それは得票分布の構造的類似性、すなわち「政党が票を獲得している地域で、候補者も同様に票を獲得している」ことを意味する。
この状態で、特定の市町村におけるCORのみが高い場合、それは候補者個人の力というよりも、その地域における政党基礎票が極端に少ないことに起因する統計的なブレである可能性が高い。
これに対して、候補者がCA空間上で所属政党から遠くに位置している場合、その候補者が政党本来の支持基盤とは異なる層から票を引き出していることが示唆される。
このような候補者が高いCORを記録している場合、その高い集票効率は、政党の看板に依存しない候補者個人の動員力によるものであると判断する強力な根拠となる。
この意味で、CAにおける距離は、CORの実質的解釈を条件づける文脈的指標として機能する。
4.2 逆の場合の解釈
まず、対応分析において候補者と政党との距離が大きい場合、それは候補者が政党の伝統的な支持基盤から離れた戦い方を選択していることを意味する。
このような状況での低いCORは、候補者の選挙戦略と政党が持つ既存の地域的支持基盤とのミスマッチを反映した、構造的な集票効率の低下として説明される。
一方で、政党との距離が小さく、支持基盤が重なり、得票分布の構造が類似しているにもかかわらずCORが極端に低い場合、政党の地盤内にいながら本来取り込むべき基礎票を十分に吸収できていない可能性、あるいは候補者個人の訴求力が基礎票を増幅させるに至っていない可能性が示唆される。
ここでは、説明の焦点は構造条件から、候補者レベルのパフォーマンスや選挙活動の有効性といった要因へと移行する。
さらに、純粋に数値的な観点から見ると、ある地域において政党の基礎票が極めて強固である場合(すなわち分母が非常に大きい場合)、候補者の絶対的な得票数が相応に多くても、CORは相対的に低く算出されることがある。
この現象は、候補者の評価を意味するものではなく、比率指標そのものが持つ数学的性質として理解されるべきである。
→ ★データで探る福岡の選挙動向:メモの整理(2025年9月10日以降のココログ及びnoteでの記事のリスト)
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