対応分析(参院選2025年福岡)の分析資料及びメモ(その2)
福岡県の参院選2025年の結果について、地域、政党、候補者のデータを用いて行った対応分析
→ 対応分析(参院選2025年福岡)の分析資料及びメモ(その1)
1. 分析用データ
市町村別(municipality)の各政党(party)の得票数の表と市町村別の各候補(candidate)の得票数の表を横に結合したものである。行(row)に市町村、列(column)に政党と候補者がきている。2次元データの結合であり、3次元のデータではない。


2. 作成されたグラフ等
「coord_fixed(ratio = 1)」として設定した場合
2.1 当選可能性との関係
第1軸座標と得票率との関係を見ると、第1軸座標が負である自民党や自民党候補の得票率が最も高いことが確認できる。 非都市部における伝統的政党の集票力が依然として選挙結果を左右する重要な要素であることが示されている。 得票率がそれに続くのが参政党候補と参政党であるが、座標値は負ではなく正である。
第2軸座標でも、自民党、自民党候補、参政党候補が高い得票率を示している。自民党及び自民党候補の座標値は極めて低い。参政党候補の参政党の座標値はゼロの近い。
2.2 第1軸の解釈について
以下は地域と候補者得票数を対応分析した場合のグラフである。
地域番号10:福岡市中央区、地域番号9:福岡市博多区、地域番号11:福岡市南区、地域番号8:福岡市東区、地域番号15:大牟田市、 地域番号20:柳川市、地域番号37:嘉麻市、地域番号21:八女市
軸への寄与度が大きい地域が、正の側では福岡市中央区、福岡市博多区、福岡市南区等であり、負の側では、大牟田市、柳川市、嘉麻市、八女市等であることを読み取ることができる。同じことが、地域の政党支持と候補者支持とをまとめて対応分析した場合の軸の解釈にも通用するとみられるので、同じように「都市度」と解釈することにする。
2.3 第2軸の解釈について
地域と候補者得票数を対応分析した場合には、第2軸を「支持基盤の『質的』差異」と解釈した(以下のグラフを参照)。これが、候補者と政党の両方を同時に位置づける対応分析の場合には、そのことが、両軸軸上で候補者と政党との距離という形で可視化される。
3. 市町村と政党のクラスタリング
4. 検討用メモ
1. 【越境型】 党の枠を超えて支持を広げている候補
所属政党の支持層(地盤)とは異なる層からも票を得ている、あるいは「党の平均的な支持層」とは異なる地域で強い候補です。
NOD候補(立憲民主党)
データの特徴: 立憲民主党の候補でありながら、データ上の位置は「自由民主党」に極めて近い(立憲本体よりも自民に近い)。
分析: これはこのデータの中で最も特異な動きです。NOD候補は、立憲民主党の公認でありながら、実態としては「保守層(自民党支持層)」や「無党派層」から大量に集票している可能性があります。「保守本流に近い立憲」あるいは「自民党に不満を持つ保守票の受け皿」として機能していることが示唆されます。
2. 【競合型】 支持基盤が激しく被っている候補
所属政党は違いますが、データ上(地域ごとの得票傾向)で「支持層がほぼ同じ」になっているグループです。
MOR候補(日本保守党) と KWM候補(国民民主党)
データの特徴: MOR候補(日本保守党)は、データ分析上「国民民主党」と非常に近い位置にいました。
分析: 「日本保守党」と「国民民主党」は、この地域において支持基盤がバッティング(競合)しています。どちらも「自民党ではないが、左派でもない」という層を取り合っており、MOR候補とKWM候補は同じパイを奪い合っているライバル関係にあると言えます。
ITO候補(日本維新の会) もこのグループに近く、いわゆる「第三極」の票がこの3人に分散している構図です。
3. 【直結型】 党の組織力と完全に一体化している候補
「党の勢い=候補の勢い」となっており、党の支持基盤を忠実に固めているグループです。
NKD候補(参政党)
データの特徴: 参政党との距離がほぼゼロ。
分析: 参政党の組織票や熱心な支持層が、そのままNKD候補に流れています。他党への広がりは少ない代わりに、党の支持者は逃していません。
SHM候補(公明党) & YMG候補(日本共産党)
分析: これらも組織政党らしく、党のプロット位置と候補者の位置が強くリンクしている典型的なパターンです。
MTS候補(自由民主党)
分析: 自民党の中心位置に近く、標準的な自民党候補としての得票パターンを示しています。(ただし、同じ自民党票の一部を立憲のNOD候補に食われている可能性があります)。
NAS候補(社民党) & OKS候補(れいわ)
これらは、正確な表現ではありませんが、いわゆる「左派」ブロックとして、NOD候補(立憲)とは異なる独自の位置にプロットされています。
[参考]
以下は、政党得票率とCOR(候補者超過達成比率)の関係を野田候補、川元候補、中田候補について示したものである。
立憲民主党野田氏のCORがきわめて高い地域があり、分散が大きい。参政党中田氏の政党得票率とCORとの関係はほとんど存在しない。
国民民主党川元氏のCORは、政党得票率が相対的に低い地域で1以下となっているケースが多い。

4. 「重心の原理」あるいは遷移公式
行(地域)と列(変数)を同じ平面で近接性を調べることに問題はないか? これについては、統計学の理論上、少し慎重な解釈が必要です。 厳密な話(理論): 数学的には、行(地域)と列(政党・候補者)は「異なる空間」に存在するため、「地域Aと政党Bの間の距離」は定義されていません(計算できません)。定義されているのは「地域同士の距離」、「政党同士の距離」、「候補者同士の距離」だけです。
実用的な話(解釈): しかし、対応分析では「重心の原理」という特別なルールを使って、この異なる空間を数学的な変換を行って重ね合わせて表示しています。 これにより、「関連が強いもの同士は近くに表示される」 という視覚的な関係性が保証されます。 したがって、「近接性について調べる(近いから関係が深いと判断する)」ことに問題はありません。 それが対応分析の最大の目的だからです。この「重心の原理」を数学的に裏付けているのが「遷移公式」です。
遷移公式:相互に引っ張り合って位置が決まる
遷移公式は、以下の2つのルールがセットになっています。
ルールA: 「ある地域の位置」は、そこで票を取った候補者たちの位置の平均(重心)で決まる。
ルールB: 「ある候補者の位置」は、その人が票を取った地域たちの位置の平均(重心)で決まる。
この「卵が先か、鶏が先か」のような、お互いの位置がお互いの平均(重心)になっている関係式のことを「遷移公式」と呼びます。
→ ★データで探る福岡の選挙動向:メモの整理
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