c. 文学

July 09, 2025

きのうテジュ・コール『オープン・シティ』(新潮社、2017年)を読みおえた。

きのうテジュ・コール『オープン・シティ』(新潮社、2017年)を読みおえた。 最後の章は第21章で、グスタフ・マーラーの音楽のこと、ニューヨークの自由の女神像に衝突して命を失う鳥のことなどが描かれていた。

感想は、とりあえずこれしか書けない。形式的なことで言うと、基本的にすべてが主人公の独白となっている。本人以外が言ったことも引用符なしに並べられている。しかし、読みにくいというわけではない。友人との会話や、散歩の途中で出会った人の発言などがそのまま書かれている。たしかに、人が自分のことを話すときには、それをそのまま文字化したらそのようになるはずだ。

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July 05, 2025

テジュ・コールと日本人

テジュ・コールの『オープン・シティ』を、第1部の後半まで読んだ。第1部の最初のところで「サイトウ教授」という人物が登場した。戦争が勃発して「アイダホのミニドカ強制収容所に家族とともに抑留された」ことのある「中世英文学」の名誉教授が主人公(「若き精神科医」)の「恩師」として描かれていた。

「暗い色のスーツを着た男女の中には若い日本人の会社員もいて、それぞれ会話を後ろにたなびかせながら私の横を早足で歩いた。」 ワールド・フィナンシャル・センターから出てくる大勢の人についてのこういう描写の中にも日本人が登場していて興味深い。

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Open City is a 2011 novel by Nigerian-American writer Teju Cole. The novel is primarily set in New York City, and concerns a Nigerian immigrant, Julius, who has recently broken up with his girlfriend. The novel received praise for its prose and depiction of New York.
It was included on several end of year lists of the best books published in 2011.
Julius, a man completing the last year of a psychiatry fellowship, wanders the streets of New York City, travels to Brussels, and meets a variety of people over the course of a year.
-- Wikipedia

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July 01, 2025

本を読むこと

「その秋、私は本から本へ飛び回った。ロラン・バルトの『明るい部屋』、ペーター・アルテンベルクの『魂の電報』、ターハル・ベン・ジェルーンの『ラスト・フレンド』。」
「会話のときや、群衆の中で声を上げるときを除いては、自分の声に少しも馴染みがない。けれども本は会話として受け取れる。つまりある者が別の者に話して聞かせていることとして受け取れる。そして会話なら声があるのが自然だ、というより自然であるべきだ。だから私は自分を聴き手にすると同時に別の者になりきって音読したのだった。
テジュ・コール『オープン・シティ』(新潮社、2017年)

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May 15, 2025

グレアム・グリーン『国境の向こう側』(ハヤカワepi文庫、2013年)を読みおえた。

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「移りゆく世界と人々の心情に向けられたイギリスの巨匠の冷静な視線を味わえる傑作短編集」とカバーに書いてある。

「モランとの夜」は、情事とかではなく、グレアム・グリーンが少年時代に読みふけったというピエール・モランという作家との偶然の出会いのことであった。G・K・チェスタトンも、小説の中で出てきた。コルマールというフランスの町の近くの村で教会の司祭が「モランを読むなど時間の無駄だ」と答えたという記述のあとに、「チェスタトンを読んだほうがマシだっただろうね」とその司祭が小説の主人公である作者グレアム・グリーンに話したことになっている。

ポール・モランという作家は実在したようなのだが、……

「モランとの夜」のなかで主人公は、「モランの方法」を次のように説明している。

モランの方法では作中に作者が現れることは許されない。皮肉の素振りを見せることさえ欺瞞にあたる。

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March 20, 2025

グレアム・グリーンの小説

久しぶりに小説を読み始めた。グレアム・グリーンの「モランとの夜」。 文庫本1冊の中に16編の短編小説が収録されていて、どこから再開したらいいのかに自信がなかったので、確認するためにその前の12番目の「将軍との会見」の最後のところから読んでみた。南米のある国の将軍に取材をおこなう女性が主人公で、「どんな夢を見ますか? 夜ねているとき、という意味です」という質問をして、将軍が「死ぬ夢だ」と答えるところで終わっている。小説の中の、遠い国での話だが、いくつかの意味で「非現実」的なこととは感じられない。
13編目の方は、話がどう展開していくのか今のところ予想できない。
『国境の向こう側』(ハヤカワepi文庫)所収。

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January 28, 2025

都市ブランド創造局と『1984年』

初代門司港駅遺構を破壊した「都市ブランド創造局」と北九州市、文化財保護の役割を果たすことのなかった北九州市教育委員会。ある人(英語のネイティブスピーカー)と話していて、ジョージ・オーウェルの『1984年』に出てくる省庁名に似ているという結論になった。「埋蔵文化財を破壊する部局」を「ブランド創造局」と呼ぶことになっているわけだから。「戦争は平和なり」ということで、「戦争省」が「平和省」と呼ばれる世界がやってきているのか。

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October 15, 2024

小倉駅3階で古本市が開かれていた。

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サマセット・モームとグレアム・グリーンの本を買うことができた。合計で1,105円。 他に、ヴァルター・ベンヤミンの『パサージュ論Ⅲ 都市の遊歩者』(今村仁司他訳、岩波書店)、同『言語と社会』(佐藤康彦訳、晶文社)なども買って、それらは2,130円。クレジットカードは使えなかったので現金で支払いをした。

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May 25, 2024

小笠原豊樹氏の翻訳

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今日小倉駅のそばのセントシティに行った。喜久屋書店で文庫版の本を3冊買った。 その1つが、レイ・ブラッドベリ『刺青の男』(ハヤカワ文庫)である。 その訳者は、小笠原豊樹という人である。 この人は、実にたくさんの本を翻訳している。

https://ja.wikipedia.org/wiki/岩田宏

村上春樹氏の翻訳したものはほとんど読んでしまったので——最後に読んだのはカーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』(新潮文庫)——、次にこの人の訳したものに取り組もうと思っている。 この人は、知っている人は知っているのだが、岩田宏という詩人でもあった。本名は、小笠原豊樹であったようだ。

ブラッドベリの本も、『刺青の男』以外に『火星年代記』なども訳している。

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https://raybradbury.com

翻訳家・小笠原豊樹さん死去…岩田宏の名で詩も

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January 20, 2024

Abschiedsfarben

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ベルンハルト・シュリンク『別れの色彩』(松永美穂 訳、新潮社)を読み終えた。 訳者の松永美穂さんは、「別れ」というよりも「老い」がテーマになっていると「訳者あとがき」に書いている。そうだと思う。老人になると自分の人生で経験した色々な別れが思い出されてくるわけだ。

短編が9本あり、それぞれがさまざまな別れを扱っているのだが、テレビの海外ドラマを見ているときのようで、描かれている状況が自分の人生と同じようだと感じるところはあまりない。著者の人生と自分の人生とがかなり違ったものであるためなのであろう。しかし、9篇の小説は自分の人生を振り返るきっかけを与えてくれている。少なくとも、自分が経験したさまざまな別れについて考えてみることを正当化する役割を果たしている。

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September 05, 2023

私立探偵フィリップ・マーロウ

最近、レイモンド・チャンドラーの作品を読んでいる。最初に『ロング・グッドバイ』を読み、その次に『大いなる眠り』を読んだ。いま『リトル・シスター』の3分2あたりを読んでいる。すべて村上春樹氏の翻訳である。アメリカの都市の風景や建物の中の様子、人々の行動、表情についての描写が非常に綿密に行われていることが印象的な文章である。

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